目黒社会保険労務士事務所 本庄オフィス

2023年5月27日 精神障害

障害認定基準における精神障害の程度とは?

認定基準

精神の障害について説明しますね。まず、精神の障害の度合いは、原因や症状、治療といった病状の進行や日常生活の具体的な状況を総合的に見て判断します。具体的には、日常生活がまったくできないほど重い場合は1級、日常生活や仕事に大きな制限がある場合は2級、そして労働に制限がある程度必要な場合は3級と認定します。

精神の障害は種類が多く、同じ原因でも症状は多様です。だからこそ、障害の認定をする際には、日常生活での具体的な困難さと、その原因や病状の経過をしっかり考慮します。

認定要領

精神の障害とは、いくつかの区分があります。それらは「統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」です。

「症状性を含む器質性精神障害」や「てんかん」で、妄想や幻覚などの症状が見られる場合は、「統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害」や「気分(感情)障害」と同じように扱います。

統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害

1)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりになります。

障害の程度障害の状態
1級1 統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの
2級1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級1 統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの
2 気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

2)統合失調症、統合失調症型障害、妄想性障害、そして気分(感情)障害の認定をする際は、以下が留意されます。

統合失調症や気分(感情)障害の認定については、以下の要点をふまえて慎重に進めていく必要があります。

  1. まず、統合失調症というのは、予後が悪い場合もあり、多くの場合、厚年令別表第1の障害の状態に当てはまるとされます。でも、病後数年〜十数年で症状が改善することもありますし、逆に急に症状が悪化してその状態が続くこともあります。だから、統合失調症の認定を行う際は、発病からの経過と症状の変化をしっかりと考慮しなければなりません。
  2. 次に、気分(感情)障害というのは、通常、症状が強く出たり消えたりを繰り返します。だから、現在の症状だけで認定するのは不十分で、症状の経過やそれが日常生活にどう影響しているかをきちんと考慮することが大切です。
  3. さらに、統合失調症などと他の精神疾患が一緒にある場合は、単純に症状を足して認定するのではなく、全体的に症状を判断して認定するべきです。

3)日常生活能力の評価は、身体と精神の機能、そして社会的適応能力をバランスよく見て判断する必要があります。そして、現在働いている人については、ただ単に仕事をしているからと言って、すぐに生活能力が上がったとは考えません。治療の進行状況、仕事の種類や内容、働く環境、助けを受けている状況、同僚とのコミュニケーションの具体的な状況などをしっかりと確認した上で、生活能力を評価します。

4)基本的に、人格障害は認定の対象外です。

5)神経症については、症状が長く続いていても、基本的には認定対象にはならないです。しかし、統合失調症や気分(感情)障害と同じように扱われることもあります。もちろん、これらを判断するときには、その病状が国際疾病分類(ICD-10)のどの部分にあたるかをきちんと考慮に入れ判断する必要があります。

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症状性を含む器質性精神障害

1)器質性精神障害や症状性を含む高次脳機能障害は、基本的に身体的な問題が原因となる精神的な問題を指すものです。これらは、生まれつきの異常や頭部のけが、さらには変性疾患や腫瘍、そして中枢神経系の障害に起因するものも含んでいます。

また、全身的な疾患である膠原病や内分泌疾患が中枢神経に影響を及ぼすことで生じる精神的な症状も、同じくこのカテゴリーに分類されます。

さらに、精神や行動に影響を及ぼす物質、例えばアルコールや薬物の使用が原因となる精神的な問題も、ここに含まれます。

そして、器質性精神障害と他の精神疾患が同時に存在する場合は、それらは一つずつ個別に認定されるのではなく、全体の症状を総合的に判断して認定します。これにより、より全体的な視点から病状を把握し、治療を進めることが可能となります。

2)各ランクに該当する具体的な例をいくつか挙げてみましょう。

障害の程度障害の状態
1級高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明なため、常時の援助が必要なもの
2級認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの
2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの
障害手当金認知障害のため、労働が制限を受けるもの

3)脳の物理的な問題については、多彩な症状のために、精神的な問題と神経的な問題を完全に区別することは難しいです。だから、基本的にはこれらの全ての症状を一緒に見て、全体的な状態を全面的に判断して評価します。

4)アルコールや薬物などの物質を使用して起こる精神的な問題については、急性中毒や物質依存の明らかな証拠がなければ、基本的には評価の対象にはなりません。
精神作用物質を使って精神的な問題が発生した場合は、その起源に注意を払い、症状の始まりから治療の過程や症状の進行をしっかりと考慮します。

5)高次脳機能障害とは、脳の損傷が原因で生じるさまざまな認知障害を指します。これが日常生活や社会生活に影響を及ぼす場合、その人は評価の対象となります。その症状には、言語の喪失、行動の喪失、認識の喪失のほか、記憶力の問題、注意力の問題、行動機能の問題、社会的な行動の問題などが含まれます。そして、リハビリテーションや自然な回復力により、症状は改善されることもあります。なので、治療の経過や症状の変化をしっかり考慮することが大切です。また、言語の障害に関しては、「音声または言語機能の障害」のセクションにあるガイドラインに従って評価されます。

6)日常生活の能力を判断するときには、身体的な機能と精神的な機能を考慮し、それがどれくらい社会に適応しているかを見て判断しましょう。また、仕事に出ている人がいたら、ただ働いているからといってすぐにその人の日常生活能力が向上したとは思わないでください。その人の治療の進行具合、仕事の種類や内容、仕事環境、仕事での支援の有無、そして他の職員とどうコミュニケーションをとっているかなど、色々な観点から彼らの日常生活能力を評価することが重要です。

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てんかん

1)てんかん発作は、多彩な形で現れます。それは部分発作、全般発作、さらには未分類というカテゴリーのてんかん発作などとして分類されます。

また、発作の頻度は人それぞれで、薬物療法により完全に発作が止まる場合もありますが、一方で発作が抑えられない難治性てんかんの状態も存在します。

さらに、てんかん発作はその重症度や発作の頻度だけでなく、発作の間に生じる精神神経症状や認知障害など、様々な問題を引き起こす可能性があります。これは稀なケースではなく、しばしば見られるため、注意が必要です。

2)以下に示すのは、各等級に該当する可能性がある一部の例です。

障害の程度障害の状態
1級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの
2級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの
  • (注1)発作のタイプは以下の通り
  • A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
  • B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
  • C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
  • D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作
  • (注2)てんかんは、発作と精神神経症状及び認知障害が相まって出現することに留意が必要。また、精神神経症状及び認知障害については、前記「B 症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定すること。

3)てんかんの評価は、複数の要素を考慮して行います。発作の重症度(意識障害、生命や社会生活に対する危険性など)や発作の頻度はもちろん、発作間に現れる精神神経の症状や認知障害の影響、そしてこれらが日常生活にどれ程影響を及ぼし、社会的な不利益を生じさせているのかという観点からも評価されます。

多様なてんかん発作が存在し、発作の間に精神神経症状や認知障害が生じる場合、治療の経過や日常生活の状況により、より高い等級での評価がなされることもあります。

また、てんかんと他の評価対象となる精神疾患が併存する場合でも、それぞれ別々に評価されるのではなく、全ての症状を総合的に評価し、認定します。

4)原則として、抗てんかん薬の服用や外科的治療によりてんかん発作が抑制されている状況では、それは認定の対象には含まれません。

知的障害

1)知的障害とは、発達期(おおむね18歳まで)に現れる知的機能の障害で、これにより日常生活に持続的な困難が引き起こされ、何らかの特別な援助が必要な状態を指します。

2)以下に示すのは、各等級に該当する可能性がある一部の例です。

障害の程度障害の状態
1級知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの
2級知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
3級知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

3)知的障害の評価においては、単に知能指数を重視するだけではなく、日常生活の多岐にわたる場面での援助の必要性を考慮し、全体的な視点から判断が行われます。

また、知的障害と他の評価対象となる精神疾患が併存する場合でも、それぞれを加重して評価するのではなく、全ての症状を一体として総合的に評価し、認定します。

4)日常生活能力の評価に際しては、身体的な機能と精神的な機能を考慮し、その上で、社会的適応能力の度合いに基づいて評価が行われます。

5)就労支援施設や小規模作業所に参加する者だけでなく、一般的な雇用契約に基づいて労働している者も、援助や配慮を受けながら労働を行っています。したがって、労働を行っているという事実だけで、日常生活能力が自動的に向上したとは考えません。

現に労働を行っている者については、その療養状況と共に、仕事の種類、内容、就労の状況、仕事場で受けている援助の具体的な内容、他の従業員との意思疎通の状態などを十分に検討し、日常生活能力を評価します。

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発達障害

1)発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥/多動性障害など、脳機能の障害を含む疾患を指します。これらの症状は、通常、幼年期に明らかになります。

2)発達障害の評価では、知能指数が高い場合でも、社会行動やコミュニケーション能力の障害により、人間関係の維持や意思の疎通が円滑に行えず、日常生活に大きな制限が生じることに注目します。

また、発達障害と他の評価対象となる精神疾患が併存している場合でも、それぞれを加重して評価するのではなく、全ての症状を一体として総合的に評価し、認定します。

3)発達障害は通常、低年齢での発症を特徴とします。しかし、知的障害を伴わない方が発達障害の症状により、20歳以降に初めて医療機関を受診した場合、その受診日を初診日とします。

4)各等級に適応可能と判断される具体的な状況は、以下のような例を参考にすることができます。

障害の程度障害の状態
1級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
2級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
3級発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

5)日常生活能力などの評価を行う際には、身体的な機能や精神的な機能を十分に考慮した上で、社会的な適応力の度合いに基づき判断します。

6)就労支援施設や小規模作業所に参加する方だけでなく、一般就労を行っている方も、労働は援助や配慮を受けて進行しています。そのため、単純に働いていることをもって日常生活能力が向上したとは見なせません。労働を行っている方の日常生活能力を判断するには、その療養状況や仕事の種類、内容、就労状況、職場での援助、他の従業員との意思疎通などをきちんと確認する必要があります。

精神障害の対しての事例

監修者:目黒貴史(めぐろ たかふみ)

埼玉県社会保険労務士会会員
会員番号:第1041610号 登録番号:第11140022号

日本大学大学院修了。社会保険労務士事務所勤務を経て、平成26年独立開業。年金相談実績は1000件以上。そのほか、各種年金セミナーや書籍の専門家校閲なども行なっています。

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