目黒社会保険労務士事務所 本庄オフィス

2022年3月9日 障害年金

障害年金が貰えない人ってどんな人?

障害年金がもらえない人もいるって話を聞いたんですが、本当ですか??

障害等級に該当するといっても、必ずしも障害年金を受給できるわけではありません。今回はどんな方が貰えないのかを説明して行きましょう。

目次

最重要点は、障害の程度が受給要件に該当しているか

障害年金は、「初診日に関する要件」「保険料納付に関する要件」「障害程度に関する要件」の3つの要件を満たしていれば受給可能となります。受給の要件には「働いていないこと」という要件はないので、「働いていない=不支給」となるわけではありません

しかし、障害年金の受給に関して就労の有無が上げられる事が多いのは、就労の状態が、3つの受給要件のうちの「障害程度に関する要件」に関係している場合があるからだと考えられます。つまり「仕事ができる状態なら、障害はそれほど重くないだろうから、障害年金は不要だ。」という推測です。

障害年金の受給には、以下の受給要件をすべて満たしていることが必要です。

  1. 「初診日」に関する要件・・・初診日における加入制度
  2. 「保険料の納付」に関する要件・・・初診日の前日における保険料の納付状況
  3. 「障害の程度」に関する要件・・・認定日における障害の状態

外部障害と就労の関係

障害程度要件には、厚生労働省から出ている「障害認定基準」をもとに要件を満たしているかどうかの認定が必要になります。

例えば、聴覚の障害は、2級は「両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの」となっています。この基準に該当すれば、就労の有無にかかわらず障害の程度は2級と認定されます。この場合、2級の障害年金が満額支給され、就労で得た収入の分が差し引かれることもありません。(※ 20歳前障害の場合のを除く。)

つまり、障害の程度が「障害認定基準」に該当していることが明らかであれば、障害年金は受給可能となります。

視覚や聴覚などの障害や、肢体の障害は、障害認定基準が数値で示されており、基準に該当するかどうかが明確です。他にも、人工透析や在宅酸素療法の開始、ペースメーカー埋め込みなども明確です。

この障害認定基準に該当していることが明確な外部障害の場合は、就労の有無に関係なく障害年金を受給できると言えます。

内科系・精神系の障害と就労の関係

しかし、内科系精神系の障害は注意が必要となります。

内科系や精神系の障害の場合、障害の程度は数値ではなく文言で表現されるものが多くなるからです。

例えば、障害等級表には「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」なら1級、「日常生活が著しい制限を受ける程度」なら2級、と記されています。数値が示されていないので、著しい制限とはどのような状態をなのか、その判断はどうしてもあいまいになります。

診断書も同様です。

例えば、精神の診断書では、日常生活能力の程度を判断するにあたって、「(1) 普通にできる」「(2) 援助が必要」「(3) 時に応じて援助が必要」「(4) 多くの援助が必要」「(5) 常時の援助が必要」の5段階の中から該当している状態を選択する箇所があります。どの程度が「多い」のか、その線引きはあいまいです。ある人には「支援が多い」と感じる場合でも、他の人には「支援が必要なのは時々程度だ」と感じるかもしれません。

したがって、「あいまいな基準」になりがちな内科系や精神系の障害の場合、障害の程度の判断根拠の一つとして「就労しているか?」という事実が注目されがちなので注意が必要です。

もちろん、障害年金を申請する際に注意が必要なだけで、就労していたら障害年金を絶対に受給できないというわけではありません。それでは、どのような注意が必要なのでしょうか?

精神障害の対しての事例

就労の状況を診断書や申立書に反映させることが大切

就労の有無は「就労している」「就労していない」の二者択一です。しかし、実際の就労状況は人によって様々となります。

障害の程度を認定する際に、ただ単に労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上しているとは捉えずに、他の様々な面(※)も十分考慮して判断することになっているのです。

※ 「他の様々な面」には、仕事の種類・内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況、仕事場での援助や配慮がない場合に予想される状態、就労による就労以外の場面への影響などがあります。

したがって、内科系や精神系の障害を持ちながら働いている人が障害年金を請求する場合は、どの程度の負担の仕事か、働くにあたってどのようなサポートが必要か、といった就労に関する状況を審査機関に正しく伝えることが非常に大切になります。

具体的には、次のようなことがあれば、【診断書の「現症時の就労状況」「日常生活活動能力及び労働能力」】の欄や【病歴・就労状況等申立書】に就労の状況をしっかりと反映させるようにしましょう。

  1. 単純かつ反復的な作業を見守られながら行っている
  2. 業務の間に休憩を多めに取っている
  3. 1日の労働時間や1週間の勤務日数を少なくしている
  4. 遅刻や早退、急な欠勤などが頻繁にある
  5. 他の人とコミュニケーションを取らなくてもよいような配慮を受けている
  6. 仕事がある日はグッタリしてしまい、家事が一切できなくなる

普段の診察の時に就労状況を医師に詳しく伝えている場合はよいですが、なかなか詳細までは伝えられていない、という方がほとんどだと思います。なので、医師に診断書を依頼する際には、就労状況をメモにまとめて、メモを見ながら伝えたりメモを渡したりなどして、診断書を作成する時に参考にしてもらうと安心です。

そして、知的障害の方が作業所で働けている場合にも、「もし配慮がなかったとしたら、同じように働けるか?」ということを目安に考えてみてください。

多くの人が、障害年金を受給しながら働いています。「働いたら障害年金は無理」「働き始めたら支給が止まる」と必要以上に恐れる必要はありません。

20歳前傷病による障害基礎年金には所得制限がある

ここまで就労と障害年金の関連をお伝えしましたが、所得額と障害年金の関連については、注意するべきパターンがあります。20歳前傷病による障害基礎年金に限っては、就労などによって得た所得が一定額以上の場合は障害基礎年金の一部または全部が支給停止となる場合があります。

障害年金は、年金を未納(滞納)していてももらえる?

障害年金の納付要件は、「初診日までの一定期間、年金保険料を納めていること」です。この納付要件は大きくわけて2つのパターンがあります。

納付要件1:「3分の2要件」を満たしていれば大丈夫??

納付要件の1つ目が「3分の2要件」となります。これは初診日があった月の前々月までに「公的年金制度に加入すべき全期間の中で、3分の2以上の期間で年金保険料を納付していること」を条件とするものです。たとえば初診日が10月1日だとしたら、10月の前々月として8月までに納めた年金保険料が「納付要件」の対象となります。

納付要件2:「未納」を解決する方法は「直近1年要件」

「直近1年要件」とは、令和8年(2026年)3月31日までの特例として、平成3年(1991)5月1日以降に初診があるときのみ、初診日の属する月の前々月からさかのぼった1年間が未納(いわゆる滞納)なしの状態であれば障害年金の申請が可能になる制度となります。

たとえば初診日が令和元年(2019年)10月1日ならば、前年の平成30年(2018年)の8月から1年間、年金保険料の未納がないことが条件となります。以前に実施された後納を可能にする制度とは異なりますが、救済措置の1つとして実施されています。

もし「3分の2要件」を満たしていない場合でも、この制度によって障害年金の給付条件をクリアできる可能性がありますので、直近の納付状況をお近くの年金事務所で確認するか、あるいは日本年金機構の「ねんきんネット」にログインして確認してみてください。

障害年金受給には上記の「3分の2要件」「直近1年要件」など制限がありますが、救済措置もありますので、障害年金受給を考えている場合は、自分の年金情報を確認し、必要なら免除申請なども活用してみることがおすすめです。

まとめ

  1. 就労していても、受給のための要件を満たせば障害年金は受給できる。
  2. 障害の状態を数値などで示すことができない内科系や精神系の障害では、労働能力があるかどうかが認定に影響を与えることがある。
  3. 就労に関する状況(負担の程度・配慮の内容など)が診断書や申立書にしっかりと反映されるように注意する。
  4. 障害年金受給には「3分の2要件」「直近1年要件」など制限がありますが、救済措置もある。

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監修者:目黒貴史(めぐろ たかふみ)

埼玉県社会保険労務士会会員
会員番号:第1041610号 登録番号:第11140022号

日本大学大学院修了。社会保険労務士事務所勤務を経て、平成26年独立開業。年金相談実績は1000件以上。そのほか、各種年金セミナーや書籍の専門家校閲なども行なっています。

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